FacebookやTwitter、インスタグラムなどのSNS有料化と今後の影響を考察

SNS有料化

FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSは無料で利用できるのが当たり前でした。閲覧だけであればアカウント登録すら必要ではなく、ハードルで利用できるものとのイメージが強いのではないでしょうか。

根本的な部分については大きな変化がありませんが、近年は大手のSNSで有料化が進められています。特に世界最大規模のSNSであるFacebookを運営するMeta社が有料化を発表したことで業界が大きく変化しようとしている状況です。FacebookやTwitter、Instagramなど大手のSNSが有料化を進めていることについて考察します。

FacebookやTwitterとインスタグラムは有料化の時代へ

FacebookやTwitterとインスタグラムは有料化の時代へ

冒頭でも解説したとおりFacebookやTwitter、Instagramには有料化の流れが来ています。まずはどのように有料化が進んでいるのかについて理解を深めておきましょう。

Facebookの事例

Facebookを運営する米メタ社は2023年2月19日、Facebookに有料の認証マーク「Meta Verified(メタ・ヴェリファイド)」を導入すると発表しました。こちらは法人向けのサービスではなく、個人向けのサービスですが、ついに有料化が開始されたのです。ただ、全世界でリリースされているのではなく、現在はオーストラリアとニュージランドで試験的に導入されています。

個人向けの認証マークについては価値を感じられない人がいるかもしれませんが、米メタ社の発表によると「認証マークによって確実に自分のアカウントであることが証明できる」とされています。つまり、Facebookアカウントのなりすまし防止のために有料化が導入されたのです。事前に運転免許証など個人のIDが特定できる資料の提出が求められ、申請内容に問題がないことが認められれば誰でも認証マークを取得できます。

料金はWeb版が月額約12ドル、iPhone版が月額約15ドルです。これを高いと感じるかどうかは人次第でしょう。フリーランスなどで仕事を受注していて、自分のFacebookアカウントであることを証明したい人には安い価格設定なのかもしれません。

Twitterの事例

Twitterを運営する米Twitter社も有料の認証マークを提供するようになりました。Twitter社はイーロン・マスク氏による買収によって方針などが変化していて、その一環でTwitterの有料化が進められています。

Twitterのサービスは「Twitter Blue」と呼ばれていて、事前に携帯電話で認証することで青色の認証マークを得られるものです。これまで、認証マークは著名人や法人など特定のアカウントにだけ付与されていましたが、こちらのサービスが提供されることで認証マークの幅が広がりました。なお、法人などについては別途ビジネスアカウントとして金色(黄色)の認証マークが付与されるようになっています。

ただ、TwitterはFacebookのように個人情報を元にしたアカウントの評価を実施していません。これはそもそもFacebookとは異なり、匿名でも利用できることが背景にあるでしょう。そのため、認証マークを取得しても、Facebookほど信頼感は得られない状況です。

ただ、有料化によって表示される広告が減少するなどの効果があります。近年はSNSに多くの広告が表示され、利用に支障を感じることもありました。そのような問題を解決できるという点でSNSの利便性を大きく左右するサービスです。

インスタグラムの事例

インスタグラムも米メタ社が運営しているため、Facebookと同様の認証マークが導入されています。それぞれが別のサービスというわけではなく、Facebookで認証マークを取得するとインスタグラムにも適用されると考えましょう。Facebookのアカウントでインスタグラムにもログインできるため、このような運用となっています。

なお、インスタグラムではアカウントの有料化とは別に利用者がサブスクリプションを提供できるようになりました。登録者に対して限定のサービスを提供することで収益化できるようになったのです。これはFacebookやTwitterなどSNSの有料化とは異なる仕組みであるため、誤った理解を持たないようにしましょう。

SNSが有料化するメリット

SNSが有料化するメリット

大手のSNSが有料化したことで「利用者にとって何かしらメリットがあるのか」と感じた人が多いのではないでしょうか。続いてはFacebookやTwitter、インスタグラムの有料化から、SNSの利用にどのようなメリットが生まれるのか解説します。

セキュリティの向上

SNSが有料化することで、セキュリティが向上するメリットを感じられます。ここでのセキュリティとは以下のような意味合いです。

  • アカウントの保有者が自分であることを証明する
  • 第三者によるアカウントの乗っ取りを防止する

近年はSNSアカウントの乗っ取りやなりすましが問題視されています。乗っ取りについては自分自身が気をつけることで防止できますが、なりすましについては限界がある状況です。同じ名前でSNSアカウントを開設されてしまうと、思うように対処できないことがあります。

しかし、有料のサービスを利用すると、SNSのアカウント名に認証マークを表示させることが可能です。これによって、確実に自分のアカウントであると証明でき、周りからの信頼感も得られます。仮になりすましのアカウントが現れても、本人ではないことが証明されるのです。

また、有料化することでセキュリティサービスが向上することがあります。例えば、多くの個人情報を提供していることで、ログインに必要な情報をより詳細にできるのです。また、悪意のある人物にパスワードのリセットを要求されても、個人情報を提供できないことで拒否してもらえるようになります。

広告表示の減少

どのSNSにおいても有料化によって広告表示の減少が期待できます。そもそも、広告表示はSNSが収益を得るためのものであるため、有料のユーザに対しては広告を表示する必要がないのです。これはSNSに課金する大きなメリットと考えて良いでしょう。

上記でも触れましたが、FacebookやTwitter、インスタグラムでは多くの広告が表示されます。やむを得ない部分はありますが、広告によって利便性が低下しているのも事実です。例えば、インスタグラムでは投稿と投稿の間に多くの広告が表示されるため、自分が手に入れたい情報にたどり着くまでに時間を要します。

もちろん、広告が完全に表示されなくなるのかと問われるとそうとは言い切れません。あくまでも広告表示を減少させる仕組みであり、多少は広告が表示されてしまう場合があります。とはいえ、表示される広告が減少することは利便性を高めることにつながり、有料化による大きな恩恵と考えられるのです。

新機能の追加

一部のSNSでは有料のユーザにのみ新機能を追加する方針です。例えば、Twitterでは有料のユーザに対してのみ二要素認証の機能を継続的に提供するとしています。これは一例であり、これからは有料であることで機能数が増えることはメリットです。

言い換えると、無料の範囲内で利用できるサービスに満足しているならば、有料化のメリットは薄れてしまうでしょう。新機能に魅力を感じない場合も同様にメリットがないと考えられます。「機能は多いほうが良い」との前提で説明していますが、そうではないと感じる人は有料化のメリットについて注意しましょう。

なお、現時点では有料のユーザかどうかで差別化されている機能が限られています。今後は大きく変化する可能性があるため、そこも踏まえてメリットを感じられるか考えてみることがおすすめです。

サポートの強化

有料のユーザに対してはサポートが強化されるSNSがあると考えられます。現状、明言はされていませんが、優先的なサポートが提供されると考えられるのです。

サポートを利用する機会は少ないかもしれませんが、例えばパスワードの失念があるでしょう。いち早くSNSへとログインするために、優先的なサポートを受けられるようにしてもらうのです。サポートサービスにもキャパシティがあるため、有料のユーザを優先することは不自然ではありません。

また、インスタグラムのようにサブスクリプションを提供するSNSでは、これらに関する問い合わせなどにも対応してもらえるでしょう。これは現状でもサポートが提供されていて、さらに強化されると考えられます。

SNSが有料化するデメリット

SNSが有料化するデメリット

SNSが有料化することにはメリットがありますが、逆にデメリットもあります。どのようなデメリットが考えられるかについても解説します。

金銭的な負担

SNSの有料化に伴って金銭的な負担が発生することはデメリットです。今まで、FacebookやTwitter、インスタグラムは無料で利用できることが当たり前でした。これらが有料化されてしまうと、金銭的な負担が生じてしまいます。

ただ、今後、どのような形で有料化が進められるのかは不明です。現在のように有料のユーザが優遇される可能性もあれば、有料のユーザが中心となる可能性もあるでしょう。後者の場合は、有料のユーザになることが強いられるかもしれません。つまり、サービス自体が有料化してしまうのです。

なお、現在の有料化はテスト的な位置づけであるため、今後の料金などは想定できません。多くのユーザが利用できるように価格が抑えられる可能性もあれば、さらに高まる可能性もあります。具体的な負担金額によって、どの程度のデメリットが生じるかが変化するのです。

利用者の減少

有料化によって金銭的な負担が生じ、これによって利用者が減少することがデメリットです。現時点では無料でも利用できるため大きな影響はありませんが、有料での利用が中心になると利用者が減ってしまうでしょう。

SNSは幅広い人に利用されていますが、その大きな要因には「無料で利用できるから」ということがあるはずです。無料で多くのサービスを利用でき、気軽に情報を発信できることで利用者が増えていると考えられます。最初から有料のサービスであったならば、ここまで爆発的に利用されていなかったはずです。

人間の心理として、無料で利用できたものが有料化されると「損した気分」になりがちです。「有料化されるならば利用をやめよう」と考える人がいても不思議ではありません。有料化による利用者の減少は避けられず、これはデメリットといわざるを得ません。

広告効果の低下

上記で有料化のメリットを解説し、その中で広告表示の減少について紹介しました。これは個人ユーザからするとメリットですが、企業からすると広告効果の低下というデメリットを生み出します。

例えば、Twitterでは利用者の属性によって細かく広告の表示について指示できます。「20代の男性でゲームが好きな人にのみ広告を表示する」などとイメージすると良いでしょう。ただ、この層に有料ユーザが多いと、広告を依頼しても表示される回数が少なく効果が低下することが懸念されます。

もちろん、広告では費用対効果も重要となるため、表示回数が少なくなると価格は低下するでしょう。ただ、価格が低下しても広告を見る絶対数が減ってしまうことには変わらず、今までの広告効果と同じものは期待できなくなります。

Metaの有料化によってSNSのビジネスモデルは変化するか

Metaの有料化によってSNSのビジネスモデルは変化するか

Meta社はTwitterの10倍以上のユーザを抱えていて、SNSのデファクトスタンダードを生み出しているといっても過言ではありません。この米メタ社が有料化を発表したことは、SNSのビジネスモデルに大きく影響すると考えられます。これからSNSのビジネスモデルが変化するか考察してみます。

完全な有料化はないと考えられる

SNSの有料化が進められていますが、完全な有料化はないと考えられます。上記では有料のユーザが中心になる可能性について触れましたが、現実的には難しいでしょう。

理由はいくつかありますが、まず完全に有料化すると広告の獲得が難しくなってしまいます。今のところ、SNSを有料化するメリットとして「広告の減少」をアピールしているSNSが多く、これと相反してしまうからです。広告の表示が少なくなると広告収入が減るため、これでは運営が成り立たないと考えられます。

また、完全に有料化するとユーザが大きく減少することを避けられないでしょう。上記のデメリットでも触れたとおり、無料のサービスが有料になると、利用を辞めるユーザが一定数います。SNSは生活に必須のサービスとはいえないため、完全有料化になるとユーザは大きく減少するでしょう。

これらの理由から、完全に有料化するようなビジネスモデルは実現しないと考えられます。あくまでも無料ユーザの中に有料のユーザが含まれる状況で、有料のユーザを優遇するビジネスモデルが続くはずです。

SNS事業者は収益を得られれば良いのか

FacebookやTwitter、インスタグラムなどを問わず、どのサービスにおいても重要なことは「収益を得られるか」だと考えられます。事業として運営しているため、安定した収益を得られるならば、その方法は問わないとも考えられるのです。

そのように考えると、ある程度の収益を得られる価格でSNSを有料化する可能性もあります。SNSの有料化によって広告収入が減ることは痛手だと推測できますが、それと同等の収益が有料のユーザからあれば差し支えないはずです。そのため、収益の軸を有料のユーザにシフトする可能性もゼロではないでしょう。

ただ、ここで重要となるのは本当に収益を得ることだけが重要であるのかどうかです。特に上場している企業については、収益の他にも社会への貢献度合いなどが評価されます。そのようなことを鑑みたとき、収益だけを意識したSNSの有料化は望ましくないと予想可能です。

もちろん、これは経営層が判断することであり、世論からの反発を鑑みず有料化するという判断もありえるでしょう。SNSの運営はビジネスに違いないため、それがどのように転ぶかは私たちには予測しきれません。

SNSの有料化に伴って利用者が気にすべき2つのこと

SNSの有料化に伴って利用者が気にすべき2つのこと

完全に有料化されるわけではないものの、SNSの有料化が日本にも近づいています。今後、海外と同様の有料サービスが日本で提供されるにあたって、利用者が気にすべきことを解説します。

料金設定

最初に有料化されたあとの料金設定に注目してみましょう。今はどのSNSも月額1,000円前後ですが、有料化が世界に展開される際には変化しているかもしれません。料金によって「費用対効果」が変化してくるため、ここは気にすべきです。

どの程度の料金であれば許容できるのかは人によって異なります。そのため、ここでは具体的に注目すべき金額については明示できません。現状、Facebookでは月額1,400円程度であるため、この料金とサービスをひとつに基準と考えると良いでしょう。

また、有料化が本格的に展開されるにあたって、プランがいくつか設けられることも考えられます。この場合は料金とプラン間の差についても注目するようにしましょう。

提供サービス

有料化によってどのように提供サービスが変化するかにも注目しておきましょう。サービスはユーザの利便性を大きく左右する部分であるため、料金とともに気にすべき内容です。

具体的には、有料と無料でどの程度のサービス差があるのかに注目します。例えば以下のような観点から評価してみましょう。

  • 広告は表示されるか
  • 機能数に違いはあるか
  • 同じ機能でも差別化されているか

まず、広告が表示されるかどうかは重要なポイントだと考えられます。広告の表示回数が減ると利便性が高まるため、最初に気にしたほうが良いでしょう。

また、機能数に違いがあるかにも注目しておきます。有料のユーザになることで、提供される機能が増えるならば、それは課金する大きなメリットなのです。積極的に課金する価値があるともいえるでしょう。

他にも、同じ機能で差別化されていることがあります。例えば、「お気に入り」の登録が無料のユーザは100件、有料のユーザは500件などです。機能として変化はないものの、有料のユーザになることで利便性が高まるならば、課金を検討する価値があると思われます。

まとめ

FacebookやTwitter、インスタグラムなど大手のSNSが有料化を進めていることについて解説、考察しました。日本ではTwitterが主流ですが、Twitterの10倍以上のアカウントを持つFacebookが有料化を進めています。世界的にはFacebookがリーディングカンパニーであるため、こちらの方針に世界が左右されると考えましょう。

ただ、有料化が進められるとはいえども、完全な有料化は実現できないと考えられます。有料化による利用者の減少は避けられないため、完全な有料化はできないのです。また、広告を出稿してもらう観点からも完全な有料化は難しいでしょう。

とはいえ、これからは有料のユーザに対して機能やサービスを強化する時代がやってきます。自分に必要かどうかをよく吟味しなければなりません。SNSが無料だけで利用できる時代は終わりを迎えたと考えて良いでしょう。