RPAとは?意味や概要、メリットをわかりやすく解説

RPAとは?意味や概要、メリットをわかりやすく解説

RPAとはロボット技術による自動化機能を意味し、近年大手企業を中心に積極的に導入が進んでいます。また、中小企業にとってもRPAの導入によって業務の生産性が大幅に向上し、人件費の削減にも繋げることが可能です。

ここではRPAについての概要やメリットやデメリット、RPAを実際に導入した企業の成功事例などを具体的に解説します。

目次

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の機能。何ができる?

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の機能。何ができる?

RPA(Robotic Process Automation)とは「ロボティック・プロセス・オートメーション」の略となり、ロボットによるコンピューター作業の自動化を意味します。RPAは日本を含めた海外で近年積極的に検討されていて、業務への導入に成功することによって大きな生産性と利益を享受することができます。

よく誤解されがちなのは、「RPAを適用できるのは限られた部署・業務のみ」、「弊社はRPAとは無関係の業界」という意見です。実際RPAはあらゆる業界・業種・部署に導入が可能のため、自社の自部門では導入が不可という先入観は捨てるべきと言えるでしょう。

RPAがビジネスで注目されている背景

RPAがビジネスで注目されている背景

RPAがビジネスで注目されはじめたのは2015~16年ごろとなります。日本では兼ねてより「低生産性」、「労働力不足」、「過剰労働」が社会問題となっており、特に生産性の低さは先進国の中でも断トツの最下位となります。

日本ではITリテラシーが不十分な従業員がパソコンによる事務作業に当たることが多いため、長時間業務や入力ミスに繋がるケースが散見されます。RPAは人のパソコン業務のほとんどをロボットツールによって自動化することができ、また、24時間365日稼働を続けることも可能です。

RPAによって削減できる事務作業の時間は年間数十時間というレベルではなく、数百・数千時間の単位となります。そのため、しっかりと計画して導入・活用することにより、企業は莫大な恩恵を受けることができます。

特定業界における業務のロボット化は昔から進んでいる

実は昔から特定業界における業務のロボット化は進んでいます。それはブルーカラー業界です。製造業や建設業では昔からものづくりの業務にロボットを導入しており、取り分け近年は自動車や半導体、航空・宇宙のハイテク化が目立ちます。いかにミスがなく精度の高い部品を生産できるかは、人の手がどれだけ触れないかが重要となります。

RPAはそのロボット業務をパソコンに置き換えて、ホワイトカラーの仕事に導入する作業・計画となります。既にロボット化が成熟された製造業と異なり、事務ではこれから導入を推進するとあって、企業担当者はRPAのメリットとデメリットに対して深く理解する必要があります。

RPAは業務のサポート。DX推進とはどんな違いがある?

RPAは業務のサポート。DX推進とはどんな違いがある?

パソコン上で行うあらゆる業務を人に代わって操作するRPAですが、「DX」とはどのような違いがあるのでしょうか。
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、日々の業務に最新のIT技術を導入することによって業務改革、企業の競争力の向上を目的とします。近年は「2025年の崖」が問題視されており、日本企業のアナログされた業務を改善しなければ、2025年以降は毎年12兆円以上の損失を被るという試算があります。

一方でRPAとDXの違いですが、企業のITの導入による業務改革をDXと呼ぶのに対して、RPAは業務のサポート・効率化を図る「手段」の1つとなります。故に「DXの一環としてRPAが存在する」と捉えるのが正しいでしょう。

RPAとAI、マクロ、Botの違いを解説

RPAとAI、マクロ、Botの違いを解説

RPAの導入を検討するに当たり、よく混同されがちなのが「RPAとAI・マクロ・Botとは何が違うのか?」というものです。同じくコンピューターを制御・操作し、PDCAサイクルの「D(実行)」を担うことに変わりありませんが、両者では使用領域や目的、得られるものに違いがあります。

重要なのはすべてにおいてRPAを導入するのではなく、適材適所を吟味することです。RPAは初期導入費用や維持費がかかるので、Botで解決できる問題にRPAを導入するなど、非効率な選択をしてしまうと、コストパフォーマンスが低くなって導入効果を十分得られない可能性もあります。

RPAとAIの違い

AIとは人工知能を指し、与えられるデータだけではなく、自ら学習と判断できるのが大きな特徴となり、人が設定した業務工程を自動化するRPAのシステム内に組み込むこともできます。RPAに高度なAIを搭載することで「EPA・CA」といったハイスペックのRPAを開発することも可能で、これらは通常の定型業務以外の非定型業務も自己の判断で処理することができます。

RPAとマクロの違い

RPAは近年注目されていますが、社会人にとってはExcelで主に使用する「マクロ」が自動化ツールの定番ではないでしょうか。マクロは使用範囲が限定されており、一般的にはExcelが主体となり、VBAを使ったとしてもMicrosoftのアプリを使った単純作業のみとなります。

一方でRPAはあらゆるアプリやソフト、ツールと連携することができ、最初に開発してしまえばその後の操作は簡単なため、Webやパソコンの知識が不十分な人でも扱うことができます。

ただし、導入コスト面ではマクロが優位となり、マクロが扱える人材がいれば、機能の利用自体は無料となります。Excelを利用した業務や簡単な定型作業であればRPAの必要はなくマクロで十分でしょう。

RPAとBotの違い

Botは近年サポートセンターや問い合わせなどのチャット機能でよく使われています。必要なタスクを細かくプログラミングすることで、よりユーザーの意図に沿った回答を導くチャットボットを開発することができます。

また、Google検索エンジンにもクローラーと呼ばれるBotが使われていて、24時間365日稼働し、世界中のWebサイトを回遊することで、膨大なデータベースの情報登録が可能となります。

RPAとは使用する場面が異なりますが、場合によってはRPAと連携させることもできます。例えばBotが収集した膨大なデータをRPAで仕分け処理することもできるでしょう。

RPA(ロボットによる自動化機能)を企業が導入する効果・メリット

RPA(ロボットによる自動化機能)を企業が導入する効果・メリット

RPAを企業が導入するにあたり、最大の効果が生まれるのはどのような状況下でしょうか。また、RPAの導入には費用がかかりますが、それでも導入を加速すべきメリットを以下にご紹介します。

膨大な定型業務の短縮による人件費と労力の削減

RPAの導入で最も受けられる恩恵は、これまで人間の手作業で行っていた膨大な定型業務をすべて自動化できる点です。従業員の労働時間の短縮と社内業務の効率化により、モチベーションアップも期待できるでしょう。また、人件費が会社の利益を圧迫している企業にとっては、RPAの導入によって人材の雇用・育成にかかる数千万円の費用を節約することができます。

ヒューマンエラーの防止

パソコンの事務作業では必ずヒューマンエラーが発生し、多く企業では小さくない問題として取り組むべき課題でもありました。RPAの活用で作業を自動化し、人の関与を無くすことにより、ヒューマンエラーはほぼ完全になくすことができます。ただし、RPAの不具合のリスクはあるため、担当者による管理は必要です。

DXと働き方改革に貢献

上記で解説したように、社内業務に最新のITを導入して企業の競争力を高めることをDXと呼びます。働き方改革の一環として、RPAの導入は今後不可欠になることが予想されます。

サービス業であれば顧客満足度の向上、大手企業であれば肥大化した組織・人材のスリム化を実現することができます。いずれも中長期的な取り組みとなるので、会社代表・管理職の積極的支援、他部署との連携などが必要となります。

人材リソースは解決できる?RPAのデメリットと解決方法

人材リソースは解決できる?RPAのデメリットと解決方法

RPAを適切に活用することによって、業務効率化と人件費の大幅な削減は可能となりますが、それには人材リソースの問題を解決しなければなりません。RPAには幾つかのデメリットもあるため、正しいシーンにおける運用を心がけてください。

ガバナンスの整備に時間と人材、費用を要する

RPAはまだそれほど多くの企業に周知されているわけではありません。社内にWeb担当者やITの部署がある企業でも、RPAを熟知している社員はほとんどいないのではないでしょうか。そのため、RPAを導入するにあたり、社内で運用に際してルールの作成が必要です。

また、RPA導入後に備え、システムを管理する人材の育成にも費用がかかります。これらを管理者が理解していないと、予想以上に経費がかかってしまい、失敗に終わってしまう可能性もあります。

エラーが発生したときの解決に時間を要する可能性がある

RPAもITツールとなるので不具合が発生することもあります。考えられる原因は「ネットが途切れる」、「OSやアプリケーションのバージョンアップ」、「業務内容が変わった」などが挙げられます。このようなエラーが発生した場合、RPAの業務が中断してしまうだけではなく、エラー解決のために業者を呼んだり、エラーの究明と再発防止に時間を要することが考えられます。

必ずしも費用対効果が高いとは限らない

RPAを正しく運用することで確かに業務効率は大幅に向上しますが、本当に費用対効果に優れているかは社内でよく吟味しなければなりません。RPAの導入には初期費用・年間維持費がかかるほか、サポートや保守管理を業者に委託する場合は、そちらも費用がかかります。

RPAを中長期的に使い続ける場合は内製化することが推奨されますが、管理者の育成にかかる費用と期間は見落とされがちです。RPAを導入することでどのくらいの時間を削減でき、また業務が効率化されることによって会社にどのような利益があり、導入にかかった費用に見合うか否かを考えるようにしましょう。

上述したマクロやBotで済むのであればそちらを採用するのがいいですし、RPAを導入する場合は年間スケジュールを作成して計画に沿った運用を目指してください。

社内全体に浸透しない可能性がある

RPAのよくある失敗事例の1つが「社内の特定部署のみの活用で終わってしまう」ことです。「うちの部署はRPAは使えないよ」と管理者がこのような先入観を持っていると、RPAを導入する部署としない部署が存在してしまいます。RPAの活用は会社全体の業務方針であることを明確にし、RPAやDXの必要性を管理者研修などを用いて理解させる時間も必要となるでしょう。

RPAの活用で業務効率化に成功した導入事例

RPAの活用で業務効率化に成功した導入事例

下記ではRPAを実際活用して業務効率化に成功した企業の事例を紹介します。RPAの活用を成功させるためには業務プロセスの構築が必要となります。他企業の事例をよく確認した上で自社に適した導入方法を計画してください。

「三井住友銀行」の導入事例

三井住友銀行は2017年にRPAの本格的な導入をしました。まずはすべての部署の業務の可視化を行い、自動化できる業務はすべてRPAに集約。複数のコンサルティング会社も関連した上で業務推進を成功させ、2017~2019年の間でRPAによって削減できた時間と業務量は350万時間、1,750人相当とされています。

RPAを成功させたポイントは「全部署に対してRPAを推進」と「業務の可視化と目的の明確化」が挙げられます。三井住友銀行がRPAの試験導入を開始したのは2016年で、およそ1年間試行錯誤を繰り返したのが成功に繋がったと考えられます。

「LIXIL」の導入事例

住宅機器メーカー最大手のLIXILも2018年よりRPAを業務に展開しています。LIXILはRPAの内製化を目的として、導入1年以内に250名の開発者を育成、250種のソフトウェアロボットの開発に成功しました。LIXILは仮想労働者となるデジタルレイバーを企業戦略の1つとして、将来的に700名のRPA開発者を育成することを目標としています。

「中外製薬」の導入事例

国内大手医薬品メーカーの中外製薬も2018年よりRPAの導入に着手。CFO(最高財務責任者)の直轄プロジェクトとして全社挙げての取り組みとなりました。2023年までに10万時間の作業時間の削減を目標とし、これは全社員の1%の労働時間の削減と同じ意味となります。

「RPAに積極的な部署とそうでない部署」が発生した際には、全部署に対して「RPA活動推進計画書」の作成を要求し、年間の削除目標や人材育成計画などをそれぞれのマネージャにコミットしてもらう施策をとることで解決を図ることに成功しました。

RPAの世界シェア1位はUiPath

RPAの世界シェア1位はUiPath

社内DX化が注目されているのは日本だけではありません。RPAの需要は世界全体で年々増加傾向となり、市場規模はおよそ650兆円に上ると言われています。RPAツールは日本を含む世界各国が開発しておりますが、現状の世界シェア1位はUiPathとなります。UiPathは日本でも高い人気を誇る製品ですが、世界シェアの10%以上を占めていると言われ、2位のAutomation Anywhere、3位のBlue Prismをよせつけない競争力を持っています。

一方で日本国内ではやはり国産メーカーの需要が高く、市場1位はNTTアドバンステクノロジのWinActorとなります。その他にも富士通など日本企業に主に提供する国産RPAは複数あります。RPAのメーカーや製品を選ぶ際は、提供企業のサポート体制を調べることが大切です。マイナーな製品・ツールを選んでしまうと、不具合が発生したときの問題解決に手間取ってしまう場合があります。

日本と欧米のRPA導入に向けた相違点

RPAは近年欧米でも導入が盛んに進められていますが、日本よりも欧米企業の方が成功事例が多く見受けられます。その理由の1つに挙げられるのが、RPAの導入方針の違いです。日本ではRPAのような業務効率化の導入の有無は各部署に判断が委ねられることが多いですが、欧米ではトップダウンで社長や役員が方針を決めると、即全部署全社員に共有されます。

上記で紹介した日本企業の導入事例を見ても、やはり会社の代表クラスが主導して推し進めていることが成功に繋がっている背景がうかがえます。

RPAのツールの選び方

RPAのツールの選び方

RPAツールの選び方は削減したい業務領域や規模、複雑性、管理者数、パソコンの台数などを総合的に鑑みて選択します。また、自社で内製化する場合でも最初の数年はツールのサポートやコンサルティング業者に運用方法のレクチャーを受けることでしょう。業者の対応の良し悪しもツール選びの参考にするのがいいでしょう。

RPAツールは安くない。業務の規模と予算をマッチングさせる

RPAツールは決して安いものではありません。自動化ツールとして挙げられるExcelのマクロは無料で利用できますし、Botもプログラミング技術があれば無料で作成できます。

一方でRPAツールは初期導入費用と月額費用、保守メンテナンス費用などが発生し、事業規模によっては数百万円から1000万円を超えることもあります。一方で、小規模事業者でも導入できる月額数万円のRPAツールもあるので、オーバースペックにならないように自社の目標と目的に適した製品を選ぶのが費用対効果の高いRPAを導入するコツとなります。

ITリテラシーに乏しい企業は無料ツールの活用は危険

IT部署やWebを統括する部署がないようなITリテラシーに乏しい企業がRPAの導入を検討する場合、初期費用や予算を抑えてしまう傾向にあります。RPAツールの中には無料で利用できるものもありますが、技術者がいない企業が無料ツールを導入したところで使いこなすことは難しく、設定の時点で頓挫してしまうか、通常よりも高いサポート費用を業者に毎月支払うことになる可能性が高いです。

RPAを導入する目的・目標・中期計画を具体的に立てる

RPAが必要となるほどの業務量を削減したいのであれば、相応の予算をとって年度計画に基づいて導入ツールや業者を選択するのがいいでしょう。管理者は会社全体の目的と目標、3か年、5か年といった中期スパンでの計画を立て、各部署のマネージャーは部署内で達成すべき目標を考えるべきです。

目標の具体的な中身に関しては、「削減する時間」、「業務の安定性」、「社員の満足度」、「RPAの内製化の度合い」、「育成した技術者数」などを基準にしてみてはいかがでしょうか。

RPAの種類とは。製品を紹介

RPAの種類とは。製品を紹介

RPAにはデスクトップ型・クラウド型・サーバー型の3つの種類が存在します。それぞれに特徴があるので、自社の環境に合わせた製品を選んでください。

デスクトップ型:パソコンの内部にインストールするRPA。数人規模の小規模事業者におすすめです。初期費用も安くランニングも月数万円の予算で導入できます。その代わり、クラウドやサーバー型と異なりインストールしたパソコンでしかRPAを活用することができません。

クラウド型:提供元のサーバーを利用するため独自サーバーを用意する必要がありません。メンテナンスやバージョンの更新なども提供元が行いますので、大手企業でもイニシャルコストを抑えたい場合におすすめできます。短所としてはネット環境が必要であることと、オフラインの作業ができないことです。

サーバー型:デジタルレイバーをサーバー内に常駐させることによって、接続しているパソコンをすべて一元管理できるのが特徴です。管理がしやすく情報漏洩やセキュリティ対策も自社で構築できるので大手企業向けとなります。ただし、導入費用が高いためしっかりと計画して導入しなければ費用対効果を得られないこともざらにあります。

大手企業に重宝。大規模な業務改善も可「UiPath」

世界シェア1位のUiPathはクラウド・サーバー・デスクトップのいずれにも対応可能なRPAです。高度なセキュリティと分析ツール「Insights」が特徴で、小規模事業者から大手企業まで導入できます。無料トライアルもありますし、管理ツールも充実していて、ほぼすべてが日本語化されています。

公式HP:https://www.uipath.com/ja

事業規模に合わせたプランが可能「BizRobo!」

RPAホールディングスのグループ会社のRPAテクノロジーズが開発したRPAです。国産RPAとなり日本企業の需要が高いため、BizRoboのサポートを得意とする業者も多くあるのがメリットです。1つのライセンスで無制限のロボットを開発できるので、事業規模を大きくすればそれだけ高い費用対効果を得ることができます。

公式HP:https://rpa-technologies.com/

国産RPA。日本シェア1位「WinActor」

NTTグループが提供している国産シェア1位の「WinActor」は、デスクトップ型とサーバー型を選択できるRPAです。Webの知識がない人でも使えるように、簡単な画面操作やドラッグ&ドロップでシナリオを作ることができるのが特徴です。サポート業者も多いですし、Windowsであれば大半のアプリケーションと連携させることができます。

公式HP:https://winactor.com/

まとめ:RPAの導入前は業務の改善内容の吟味を

まとめ:RPAの導入前は業務の改善内容の吟味を

今回はロボット自動化ツールのRPAについて詳しく解説しました。RPAは複数のアプリケーションを連携させて事務作業の一連の流れをロボットに任せることが可能です。それ故最初の導入部分が肝心となり、作業内容やRPA製品の選定、予算の分配など、綿密に調査しなければ失敗に終わってしまうことも珍しくありません。

これからRPAの導入を計画している企業は、まずは提供元やサポート業者に問い合わせて、自社にマッチしたプランを提案してもらうことからはじめるのがいいでしょう。