「2025年の崖」とは? DX推進の理由と背景とは?わかりやすく解説

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デジタルの技術が急速に進歩を遂げている中で、DXという言葉を頻繁に耳にするようになりましたが、ご存知でしょうか?
DXはすでに日本国内の一部の企業でも導入され始めています。
そこで、この記事ではDXの概要・経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」問題、DXを成功に導く秘訣について詳しく解説します。

「2025年の崖」とは

デジタル

経済産業省が警告

DXについて「2025年の崖」というキーワードを頻繁に目に耳にするようになりました。
「2025年の崖」とは、経済産業省の報告書で警告したものです。
「日本国内の多くの企業において、2025年の崖問題をクリアできない限り、2030年までの5年間で巨額の経済的な損失を出すであろう」と懸念を示しています。

つまり、「日本国内の各企業が現時点でのITに関する問題点や課題を克服できなかった場合は、2025年以降に大きな損失を被るであろう」と警告しているのです。
仮に企業がDXを導入・推進しなかった場合、経済産業省では2025年以降に生じる経済損失額は毎年12兆円と予測しています。

基幹システムを新しいものに替えずに21年以上も同じシステムを稼働させている企業も多く、日本国内のIT人材の不足も懸念材料のひとつです。

DXを導入・推進しない場合の今後は?

仮に、日本国内の企業がDXを導入・推進しない場合、社内でレガシーシステムをそのまま運用を継続するケースが増えてきます。
レガシーシステムとは「時代に乗り遅れた古い仕組み・システム」ことを指し、IT業界では古い技術で構築されたコンピュータシステムのことを言います。
企業が導入する運用システムを一例に挙げると、このまま古いタイプのものを継続して使い続けた場合、システム障害が発生するリスクが高まってきます。
仮にシステム障害などの問題が発生した場合、速やかに対処できれば良いですが、すでにブラックボックス化したIT環境となった場合は、対応がスムーズにできなくなり、作業効率の低下を招くリスクもあります。
社内経費を節減するために、あえて新しいシステムや機器を導入せずに、レガシーシステムを継続するケースもあります。しかし、月日が経過するたびに品質や機能の劣化を招き、維持管理の費用と大きな手間をかけてしまう結果となります。

ITのブラックボックス化の現状とは

「ブラックボックス」とは直訳すると「黒い箱」という意味ですが、IT業界では「ブラックボックス化」とは、「中身の構造がわからない」または「入力・出力との関係が不明瞭」である状態のことを指すのが一般的です。
もっと深みのある言い方をすると、「コンピュータの基幹システムの動作原理や内部の構造について詳しく解明できない状態」です。
そのような状態を放置したままで、社内システムを継続して使い続けると、トラブルが発生しても原因を突き止めるのが難しく、小さなトラブルでも解決するのに長い時間と大きな労力を費やしてしまう羽目になります。

仮にブラックボックス化した場合、システムが正常な状態に回復させるまでの間に、顧客に対して多大な迷惑をかけてしまうことになります。
たとえば、銀行ATMにシステム障害が発生した場合、回復するまでの間にキャッシュカードが使えなくなるケースもあります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の概要

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DXとは正式には英語で「Digital Transformation」(デジタルトランスフォーメーション) と言います。
英語圏の国々では「Transformation」の接頭辞である「trans」の単語を「X」と省略して表すことがよくあります。そのため、「Transformation」を「X」に置き換えて「Digital Transformation」ことをDXと呼ぶのが一般的です。
これを直訳すると「デジタル変換」、)「デジタル」のもともとの意味は、「連続的な数量を段階ごとに区分して数値で示すこと」を言い、その典型的なものには計器の測定値などがあります。
また、コンピュータを用いて計算を行った結果について数字で表示することも「デジタル」と言い、その反対語は「アナログ」です。
DXについて簡潔に表現すると、「デジタルテクノロジーによるビジネス業務・変革」です。
さらに詳しく説明すると、企業がデジタル技術を駆使することによって、ビジネスモデル
を変革し続けること」です。

経済産業省によるDXガイドラインとは?

それでは、日本国内ではDXの現状はどのようになっているのでしょうか。
経済産業省では2018年12月にDX推進のためのガイドラインが取りまとめられました。
このガイドラインには、DX推進の仕組みや企業経営の今後の方向性、DX実現に向けたITシステム構築などについて詳しく解説されているので、企業内でDXを検討している場合は、ぜひ一読しておくことをおすすめします。

DXを提唱した人物とは

DXを提唱したのは北欧のスウェーデンの大学教授・エリック・ストルターマンです。

DXが初めて提唱されたのは2004年、北欧のスウェーデンの大学教授であるエリック・ストルターマン氏が「IT技術を浸透させることで人々の生活をより豊かで良いものに変えさせる」と発表しました。

DXの2つの仕組みとは

一口にDXとは言っても、2つの仕組みがあります。
そのうちの1つはデジタイゼーション(Digitization)、もうひとつはデジタライゼーション(Digitalization)です。2つとも単語の読み方がよく似ているので、混同しないように注意しましょう。
この2つの言葉の意味は、いずれも「デジタル化」ですが、「デジタライゼーション」という言葉には、情報技術のデジタル化が著しく進化を遂げる「デジタル革命」といったニュアンスが感じられます。
デジタルテクノロジーを駆使することによって、企業のビジネスモデルが進化・変革し、新しい価値を創り出すといった意味が「デジタライゼーション」にはあります。
一方、デジタイゼーションは「単にデジタル化が行われる」というニュアンスです。

単にデジタル技術を導入してデジタル化を図ることはデジタイゼーション、企業内ではもちろんマーケティング戦略などのすべての過程においてデジタル化して新しいビジネスモデルを創り出すのはデジタライゼーションに相当します。

DX推進の理由と背景とは

今や日本国内の企業においても、DX推進に向けて動きが進んでいますが、その理由・背景について考えてみたいと思います。
デジタルテクノロジーが急速な勢いで著しく進歩を遂げており、企業間の競争意識も激しくなる状況の中で勝ち抜くためにも、DXを導入してデジタル面での改善を図り、よりいっそう強化していくことが必要不可欠となってきました。

一方、商品やサービスを利用する消費者の行動にも変化の兆しが見え始めています。企業が収益をアップするためには、さらに新しいビジネスモデルを構築し、消費者に向けて提供する必要があるため、DXは必要不可欠となりつつあります。

国・自治体などDXの身近な導入例

はんこ

脱ハンコでDX

「DXってなんだか難しそう」という先入観を抱く人もいますが、実はわたしたちの日々の暮らしの中てもDXは身近な存在となりつつあります。
とくに新型コロナウィルスの感染防止対策が強化されたこともあり、DXに真摯に取り組む企業も増えてはいますが、日本政府も積極的な取り組みをしています。
そのひとつが「脱ハンコ」「はんこレス」です。
東京都では、「2021年度までに原則としてはんこを廃止する」という取り組みを進めています。また、他の都道府県でも「はんこレス」について積極的に進めているところです。
書類に印鑑を押すのを廃止・省略する代わりに、電子申請や電子署名などのデジタル化を推進する動きが全国的にも活性化しています。

FAXの送受信の廃止

「脱はんこ」が進む一方で、ペーパーレス化の一環として「FAXの送受信廃止」の動きも高まっています。DXを推進する上でデジタル技術の導入は必須であり、アナログ的なFAX送受信廃止などのペーパーレス化は必須であると言えます。

インターネットが普及した今ではFAXの保有者数や使用者数は大幅に減少しています。電子メールやチャットワーク・スカイプなどのコミュニションツールでデジタルデータのやりとりを日常的に行っており、FAXのニーズは低くなっています。
FAXでデータの受け渡しを行う場合、時間帯によっては送受信がスムーズにできない場合もあります。印字されたデータが読み取りにくく、入力などの処理がしづらくなるケースもあります。

電話回線でFAXを送るとその都度通信料がかかりますが、電子メールやスカイプなどでデジタルデータ送信してもプロバイダ料金以外の通信費はかかりません。
東京都では、FAXを使う代わりに電子ファイルでの送受信に切り替え、2021年度までに原則として廃止する方向性を打ち出しています。
FAXを使わずにデータ送受信のデジタル化を促進することで、入力作業の操作ミスを大幅に減らし、データ集計業務の作業時間を大幅に短縮する効果が期待できます。

キャッシュレス決済

わたしたちの日々の暮らしに密着してきたのが、キャッシュレス決済です。
実はこのキャッシュレス決済もDXの一環です。
現金を出さずにクレジットカードや電子マネー、スマホアプリを使ってその場で決済することをキャッシュレス決済と言います。
キャッシュレス決済を行うことでお札や小銭を出す手間が省けることはもちろん、ポイント還元で節約効果も期待できるのが最大のメリットです。

企業でDXを成功に導く秘訣とは

このままいけば日本国内の企業の多くが「2025年の崖」に転落するのでは?と懸念の声もあります。一方、すでにDXを積極的に導入し、推進を図る企業もあります。
それでは、日本国内の企業においてDXを成功に導くにはどうすれば良いのか、秘訣についてお伝えしましょう。

社内でチームを組み長い目で戦略を立てること

企業においてDXを成功に導くには、3年後から5年後を見据えた上で戦略を立てる必要があります。DXを始めようと思っていてもすぐにスタートできるわけではありません。
DXの立案を開始してからそれを実現するまでには、最低でも1年以上の期間が必要とされています。DXを実現してから成果が上がるまでには、3年から5年はかかるものとみられます。
要はDXを始めるには「思い立ったが吉日」なのですが、早い時期に計画を立てても、実現・成果アップの効果が得られるのは長い年月がかかってしまうのです。
社内でチームを組み、長期的なスタンスで戦略を立て、社員一同で一丸となって真摯に取り組み、意識改革していくことが重要です。
まず、は社内で現在抱えている問題点や今後の課題について把握することから始めていくと良いでしょう。
社内にDXを導入して数年後にどうあるべきなのか、はっきりとした理想と目標を掲げておく必要があります。

DXの専門家に相談

企業でDXを推進していく以上は、そのための組織組成を行う必要があります。
そこで、ITに強い人材の確保が必須となるわけですが、社内にそのような人材が不足する場合は、専門家に相談して今後の戦略についてどうするべきか、アドバイスをしてもらうと良いでしょう。

「2025年の崖」とは? DX推進の理由と背景とは?わかりやすく解説 まとめ

この記事ではDXの概要・経済産業省が警告する「2025年の崖」・企業でDXを成功させる秘訣についてお伝えしました。
日本国内でDXを導入しているのは、大企業だけなのではという見方もありますが、実はそうではありません。クリニックなどの小規模な医療機関でも、すでにDXが導入されています。
受付窓口の患者に関わるデータ入力作業の負担を軽減するために、クラウド型CRMシステムを導入して、顧客管理業務の効率化を図るところも増えています。
アパレル業界でもDXを導入し、オーダーメイドの洋服の採寸を行う際に文字認識AIを活用し、社員の労働時間を大幅に削減したという成功例もあります。

また、一部の企業では商談率の向上を図る目的でMA (マーケティング・オートメーション) を導入したところもあります。一口にDXとは言っても、実にさまざまなスタイルがあります。
「DXを導入すれば必ず成功する」とまでは断言できません。
まずは企業としての今後のあるべき姿をイメージし、社内でプロジェクトチームを組み、最良のチームワークを集結させて最初の一歩から踏み出してはいかがでしょうか。